人工知能(AI)の「フレーム問題」

 

人工知能の開発過程では、「フレーム問題」という重要な問題が起こっています。このフレーム問題は、ダニエル・デネット氏という学者が考案した例がよく説明に出てきます。それは、どんな例なのでしょうか。

バッテリーと時限爆弾

フレーム問題を説明するための状況設定を見てみましょう。
仮に洞窟の中にバッテリーがあって、そのバッテリーがロボットを動かすと仮定します。しかし、そのバッテリーの上には時限爆弾が仕掛けられているのです。
ここにモデルとなるロボットがいます。このロボットは、洞窟の中のバッテリーを実際に取ってこないと、自分のバッテリーが切れて動かなくなってしまいます。それでは困りますので、洞窟からバッテリーを取ってくるように命令を受けました。
最初のロボットは、設計通りにバッテリーを洞窟から取ってくることができました。それは良かったのですが、問題なのはバッテリーの上にあった時限爆弾まで一緒に持ってきてしまいました。




もちろん、このロボットは時限爆弾がバッテリーの上に乗っているということは認識できたのですが、バッテリーを持ってくるということは、同時に時限爆弾も持ってきてしまうということに気付かなかったのです。その結果、洞窟から持ち出された時限爆弾はあえなく爆発してしまいました。つまり、ロボットは自分を滅ぼしてしまったわけです。
これではいけません。次に改良されたロボットが同じ命令を受けました。このロボットは、バッテリーを持ち出すときには時限爆弾も一緒に持ち出されてしまうことを理解できていました。
つまり、自分が何かの行動を起こしたときには、それに伴って同時に起きることに注意するようになっていました。果たして、その改良は効果があったのでしょうか。(ページ2に続く)



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人工知能に関する用語

〔IoT〕
Internet of Things(モノのインターネット)の略です。モノがインターネットに接続されることで、操作や制御を行なえる仕組みのこと。

〔アルゴリズム〕
問題を解決するための計算方法や手順のこと。

〔音声認識〕
人間が話している声をコンピュータに認識させて文字に変換する技術のことです。

〔画像認識〕
画像・動画から対象(文字や顔など)の特徴を認識して検出する技術のことです。

〔機械学習〕
膨大なデータをコンピュータに繰り返し学習させて特徴を見つけ出すことです。

〔自然言語処理〕
コンピュータに人間が使用している言葉を理解させる技術のことです。

〔シンギュラリティ〕
技術的特異点とも言われます。人工知能が人間の知能を上回る転換点のことです。未来学者のレイ・カーツワイル氏は、シンギュラリティが2045年に訪れると予測しています。

〔チャットボット〕
人工知能を生かした自動会話のプログラムのことです。

〔ディープラーニング〕
深層学習とも言います。機械学習の1つで、人間が指示を出さなくても人工知能が学習データの中で自ら特徴を見つけ出すことです。

〔ニューラルネットワーク〕
電気回路のような脳の仕組みをコンピュータで再現するネットワークのことです。

〔パターン認識〕
対象物のパターンを分析することによって、その意味を抽出することです。

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